ある研究調査結果によると、血液中のホモシステイン濃度が高い人は、心臓病などの循環器の病気にかかる危険性は通常の22倍、死亡率は9倍高くなっているということです。ホモシステインが動脈硬化を促進する原因については、いくつか推測されています。
ホモシステインという物質は、メチオニンというアミノ酸が体内で変化して作られる含硫アミノ酸です。一般的には、ホモシステインは葉酸やビタミンB12の働きで、体内で、再びメチオニンに戻ったり、ビタミンB6の働きでシステインという類似のアミノ酸に変換されたりして処理されるといわれています。欧米の研究により、このホモシステインが体内に蓄積すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞になりやすくなることが分かってきました。ホモシステインの蓄積によりアルツハイマー病などの痴呆症の発症も増加することが判明しています。
(New England Journal of Medicine 2002/2/14)
「我々の病院で2006年からの1年間に心筋梗塞で入院した371人のうち、悪玉(LDLコレステロール)が100mg/dL未満でも38%が心筋梗塞を起こしていました。これには我々も驚きました。このうち8割の人が、LH比が1・5以上でした。つまり、善玉が少なかったのです。悪玉を下げるだけで、安心しないでください。善玉も増やして、バランスをよくすることによって、心筋梗塞になりにくくなる。これが最近わかってきたことです。」と小倉記念病院、循環器科診療部長 横井宏佳氏が、読売新聞社主催の講演で述べてみえます。
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クルクミンは、HDLコレステロールを上昇させ、中性脂肪濃度を低下させた。
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研究では、肝機能や脂質代謝への影響と安全性を調べるため、マウスを使った実験で、クルクミンを体重1キログラム当たり0.5ミリグラム以上を与えたケースにおいて血液中の善玉コレステロール(HDL)の濃度が上昇した。中性脂肪濃度は摂取量が増えるほど低下量が増したということです。結論として、クルクミンは血清脂質の問題を有意に改善するとしています。
〔国立健康・栄養研究所の食品機能部の永田純一氏による研究報告が、同研究所が発行する季刊誌 健康・栄養ニュースで紹介〕
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グルタミン酸、システイン、グリシンが結合することでグルタチオンが合成される。またシステインの生合成にメチオニンが関わっていることからメチオニン代謝に異常があった場合、つまり、中性脂肪過多、LH比率の悪化による肝機能の低下からビタミンB群などの代謝不良を招き、システインの生合成にも問題が生じ、その結果グルタチオン合成にも問題が出ると考えられる。
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S-アデノシルメチオニン(SAMe)及びグルタチオン(Glutathione)代謝図
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参考資料:ウェブサイト、ブログ「臨床栄養士のひとり言」より |
アミノ酸のメチオニンがホモシステインを介してグルタチオンやSアデノシルメチオニンに変換できなくなり、肝臓をはじめとした血中にホモシステインの量が増えつづけることによって、心臓機能、血糖コントロール、腎臓ろ過能力の低下、がん細胞の発現だけでなく脳の神経組織にも影響を及ぼすことがわかってきました。パーキンソン病とアルツハイマー病の患者の血液中ホモシステイン量が健常な人に比べ異常に高いこともわかっています。
このような神経症状に至る前でも、記憶力や集中力が低下している場合やストレス耐性が低く、うつ症状が現れるケースの中にも血液中のホモシステインの濃度が高くなっている場合が少なくないそうです。
ホモシステインは血中の水や酸素と結びついて活性酸素を形成します。活性酸素は不飽和脂肪酸、やLDLコレステロールなどと結びついて過酸化脂質となり血管壁に付着、マクロファージに貪食されて泡沫細胞となって初期のプラークを形成、動脈硬化の引きがねとなります。
また、ホモシステインには血管をしなやかにする血管拡張物質の生成を阻害する働きがあります。他にも血管を修復する血小板の凝集機能を狂わせることも知られており、これにより傷ついた血管を修復する際、多量の血小板が集まって血管が詰まってしまう恐れがあります。
本来、60兆個といわれる細胞群の生体防護機構にとって最強の抗酸化物質、グルタチオン及びSアデノシルメチオニンという物質に変換をする素になるべきホモシステインが、LH比率の悪化による肝臓機能の不調からビタミン、ミネラル、メチオニンなど栄養素の代謝不良が原因で、高ホモシステイン血漿を引き起こしてしまうのではと考えられます。
小倉記念病院のケースのように悪玉(LDLコレステロール)の数値が100mg/dL未満という低い基準値内の数値であったとしても善玉(HDLコレステロール)が低ければLH比率は悪くなってしまいます。高コレステロールでなくてもLH比率が1.5以上であれば、比率の悪化とともに動脈硬化のリスクが確実に増大していくことになるようです。