関節リウマチは、全身の関節におよぶ炎症性疾患です。関節の内側にある厚さ1ミリ弱の滑膜という組織が慢性的な炎症を起し、関節に腫れや痛みが生じる症状で、発症する原因は全て明らかになっていませんが、その発症と進行には免疫の異常と関節における組織障害因子の過剰な産生が働いていると考えられています。
炎症をおこしている滑膜から、それに関わるサイトカインや蛋白分解酵素が産生されて、軟骨組織や骨が破壊されると考えられてきましたが、副腎皮質合成ステロイド剤などを投与しても完全に沈静化させることが出来ないばかりでなく、滑膜切除しても炎症が治まらないことを考え合わせると関節リウマチの主原因としてこれまで定説とされてきた滑膜疾患説は疑問であることが東京慈恵医科大学の藤井先生によって提唱されています。
また、関節リウマチの関節軟骨では深層から破壊が始まり、破骨細胞、Tリンパ球、マクロファージなどの侵食が見られ、関節軟骨U型コラーゲンペプチドに対する自己免疫応答が関節破壊の発現を起し、軟骨下骨での破骨細胞、Tリンパ球やマクロファージ等の分化、誘導を抑制する対応策を講じるべきとの見解を示しています。
ごく最近、東京医科歯科大学及び他の研究グループによる共同研究で、自己免疫疾患の原因となる「Th17細胞」の分化が転写制御因子「IカッパーBゼータ」によって決定されることをつきとめ、この遺伝子の働きを抑えれば、関節リウマチや多発性硬化症などの新しい治療法になると期待される。とこの成果が国際化学誌Natuer(ネイチャー)に、2010年4月11日付けオンライン版で発表されました。
その内容は、「関節リウマチや多発性硬化症などにおける自己免疫疾患は、私たちの身体の構成成分を敵と見誤って攻撃してしまうTh17細胞と呼ばれる特殊なT細胞が原因で引き起こされる。IカッパーBゼータ遺伝子を破壊したマウスは、実験的に多発性硬化症を誘発させても、全く発症しないことが分かった。その結果、IカッパーBゼータと呼ばれる転写制御因子が、自己免疫型T細胞「Th17細胞」の運命決定遺伝子であることをつきとめた。」ということです。
免疫細胞は、通常ウイルスなど体内に侵入した異物を察知して攻撃するが、その中でも自己免疫疾患を誘発する細胞として「Th17細胞」と呼ばれるT細胞が、インターロイキン17(IL-)というサイトカインをはじめ、さまざまなサイトカインやタンパク質を産生して炎症を起す能力を持っており、関節リウマチにおいてもTh17細胞は破骨細胞を異常に活性化させて骨を破壊するT細胞であることが明らかにされています。
この研究成果からしてIカッパーBゼータと呼ばれる転写制御因子を制御できれば、治療困難な関節リウマチや多発性硬化症などの病気を抑制及び治癒させることが可能になるということです。 |