コレステロール値が高く、高脂血症と診断された人のほうが、そうでない人よりも脳卒中の死亡率が低く、症状も軽くなるという調査結果を、東海大の大櫛陽一教授(医療統計学)が明らかにしています。動脈硬化が一因とされる脳卒中で入院した患者、計1万6850人を対象に、高脂血症の有無と死亡率、症状の強さを比較した。その結果、脳梗塞で入院した患者のうち、高脂血症でない9851人が入院中に死亡した割合は約
5・5%に対し、高脂血症の2311人の死亡率は約 2・4%だった。脳内出血や、くも膜下出血でも、高脂血症があると、死亡率は高脂血症でない人の半分から3分の1とはるかに少なかった。
このことは、コレステロール値が低い場合でも、動脈硬化になるということで、脳卒中や心筋梗塞患者の約80%は高コレステロール血症ではないということです。
ある研究調査結果によると、血液中のホモシステイン濃度が高い人は、心臓病などの循環器の病気にかかる危険性は通常の22倍、死亡率は9倍高くなっているということです。
ホモシステインが動脈硬化を促進する原因については、1969年、米国病理学誌(AJP)に、ハーバード医科大学院の若き病理学者だったホモシステイン理論の第一人者キルマー・マッカリーが「多くのアメリカ人が心臓病を患うのはコレステロールではなく、血中のホモシステイン値が高いからだ」と説いた。けれども、1970年代の医学界は、製薬会社の陰謀説も加わって?「心臓病の主な原因はコレステロール」とし、彼の説は懐疑的に受けとられ、ついに1987年、同僚によってハーバード医科大学院から追われた。
彼の説明によると、「過剰のホモシステインは肝臓でホモシステイン・チオラクトンという化学的に反応しやすい形となり、それが悪玉コレステロールといわれるLDLと肝臓の中で結びついて小さな塊(超悪玉コレステロール)となり、血液中に放出され、動脈壁に存在するマクロファージに貪食され、泡沫細胞となって動脈硬化初期のプラークを形成する。」ということです。
このホモシステインの一連の反応によって酸化ストレスが生じ、血管内皮障害、血小板の凝集により血栓が出来てしまう。また、血管壁の平滑筋細胞の増殖やコラーゲン線維の過剰な合成、カルシュウム沈着などを招き、内膜に蓄積していきます。やがて、この蓄積物はアテロームあるいはプラークと呼ばれるまだらな沈着物を形成していきます。
アテローム動脈硬化では、リンパ球、単球、マクロファージといった特定の白血球が、その発症・進展の過程を通して出現しているということは、これら白血球は炎症が起きているときにのみ集まってくる細胞なので、プラークの発生および成長から合併症までにわたるアテローム硬化の全段階が,NF−κB (エヌエフカッパービー)が関与するとされる炎症反応だと考えられている。
アメリカにおいて「医者の健康研究」として知られる14,915人の医者を対象にした身体検査が行われました。「ホモシステイン」値のレベルが高い医者はその数値が低い医者よりも3〜4倍も心臓発作の危険性が高いという結果が出ています。現在ではこの「ホモシステイン」値は糖尿病、妊娠合併症、アルツハイマー病、うつ病、間接リウマチ、骨粗鬆症などの病気にも関連があるということが分かってきています。
このように表現するといかにも「ホモシステイン」が動脈硬化の元凶のようになっていますが、人の生命維持活動にとってはとても重要な物質であることは、あまり知られていないようです。
ホモシステインは、メチオニン代謝の中間代謝物として生成されるチオール基を持つアミノ酸 である。人の細胞の抗酸化にとって大変重要な働きをしているグルタチオンやS−アデノシルメチオニン(SAMe)という物質に変換するための素になる大切な物質です。
ホモシステインが正しく代謝されるためには、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンB6といったビタミンB群と亜鉛が必要とされていますが、一方、肝臓における中性脂肪やLDLコレステロールなどの脂質過多によって肝臓機能が低下した結果、代謝不良のまま動脈硬化の原因物質として血中に放出されてしまうことが要因でもあると考えられます。
「我々の病院で2006年からの1年間に心筋梗塞で入院した371人のうち、悪玉(LDLコレステロール)が100mg/dL未満でも38%が心筋梗塞を起こしていました。これには我々も驚きました。このうち8割の人が、LH比が1・5以上でした。つまり、善玉が少なかったのです。悪玉を下げるだけで、安心しないでください。善玉も増やして、バランスをよくすることによって、心筋梗塞になりにくくなる。これが最近わかってきたことです。」と小倉記念病院、循環器科診療部長 横井宏佳氏が、読売新聞社主催の講演で述べてみえます。
つまり、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの比率が1.5より低ければ、且つビタミン、ミネラルの摂取が十分であれば、肝臓においてメチオニン代謝をスムーズに行えるということになり、グルタチオンやS−アデノシルメチオニン(SAMe)も順調に産生され、動脈硬化の直接犯、ホモシステインが引き起こす超悪玉コレステロールの血中流出も防げるということになります。
S-アデノシルメチオニン(SAMe)及びグルタチオン(Glutathione)代謝図
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参考資料:ウェブサイト、ブログ「臨床栄養士のひとり言」より |
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グルタチオンや S-アデノシルメチオニンの産生は、動脈硬化を回避するだけでなく人の生命維持にとって最も強力な防衛機構を備えることになり、悪性腫瘍(ガン)、心臓病、脳卒中、糖尿病、妊娠合併症、アルツハイマー病、うつ病、関節リウマチ、骨粗鬆症などの病気にかからない身体つくりが可能です。